
CADを操作して作図するCADオペレーターの仕事は、建築・自動車・航空・家電業界など幅広い分野で需要があります。
CAD関連の資格はたくさんあるため、「CAD資格にはどのような種類がある?」「勉強法がわからない」というような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
資格取得で基本的な操作能力が備わっていることを証明できますが、CAD資格は実施団体や難易度、内容の違いにより複数あります。また、勉強法は独学やスクール、通信講座、公的職業訓練などから選べます。
この記事では、CAD資格の種類や取得によるメリット、勉強法について詳しく解説するので、CADの資格取得に興味のある方はぜひご覧ください。
CAD資格を取得するメリットとは?資格は必須?
CADオペレーターとして働く際に、資格は必須ではありません。
しかし、未経験から就職や転職を希望する場合は資格がないと即戦力にならないため、不利になることがあります。企業側にとって、有資格者は業務の効率化や企業のイメージアップにつながるため、優遇される傾向があるのです。
建築や土木、自動車、航空、電気、通信機器などの工業製品からアパレルまで、CADは幅広く使用されています。3次元CADの需要が高まっていることもあり、CADオペレーターは将来性が見込める職業です。在宅で働くことも可能で、希望に合った求人が期待できるでしょう。
資格があれば、資格手当がつくなど収入アップも見込まれます。CADオペレーターの平均年収は、408.6万円です(令和2年賃金構造基本統計調査より)。
AutoCAD、Jw_cad、VectorWorksなど、さまざまなCADソフトがあります。資格を取得すれば、どのソフトに精通しているか、スキルがどの程度あるか証明できるので、キャリアアップや就職・転職に役立つでしょう。
CAD資格のおもな種類と概要

CADには国家資格がなく、すべて民間団体により実施されています。
おもな資格試験は次の4つです。
- CAD利用技術者試験(2次元・3次元)
- 建築CAD検定試験
- オートデスク認定資格プログラム
- Vectorworks ベーシック認定試験
各試験の内容を見ていきましょう。
CAD利用技術者試験 2次元CAD利用技術者試験(1級・2級・基礎)
CADを利用するための基本的な知識から、応用までを問う試験です。1級、2級、基礎と3つに分かれており、資格を取得することで、図面の理解力や2次元CADを使って効率的に作図できる技能を証明できます。
1級
機械、建築、トレースの3分野があり、習得したい内容に合わせて選択できます。
概要 | CADでの設計・製図業務に従事して1年以上の実務経験 または1年以上の就学経験者を想定した試験 |
試験方法・時間 | 実技試験と筆記試験を合わせて25問 80分 |
合格基準 | 実技試験・筆記試験が各5割以上 および総合が7割以上 |
受験資格 | 2級または1級(2級1級ともに旧称号含む)の有資格者 |
受験料 | 1万6,500円(過去に1級合格した者は1万1,000円) |
2級
概要 | CADでの設計・製図などの業務に従事することを目指す方 もしくは従事して間もない方を想定した試験 |
試験方法・時間 | 筆記試験(60問) 60分 |
合格基準 | CADシステム分野・製図分野が各5割以上、および総合が7割以上 出題比率はCADシステム:60%、製図:40% |
受験資格 | 制限なし |
受験料 | 6,050円 |
基礎
概要 | これからCADを本格的に学ぶ、3ヵ月程度の初心者を想定した試験 |
試験方法・時間 | 筆記試験(50問) 50分 |
合格基準 | 総合7割以上 |
受験資格 | 制限なし |
受験料 | 4,400円 |
CAD利用技術者試験 3次元CAD利用技術者試験(1級・準1級・2級)
近年、3次元CADの需要が高まっていることから、注目を集めている試験です。3次元CADの使用で必要とされる、知識と技能を持っていることが証明できます。合格基準は級に関係なく一律で、各分野5割以上、および総合で7割以上を正解すれば合格です。
1級
概要 | 3次元CADで、機械・製造系のモデリング・設計・製図などの業務に従事して半年以上の実務経験、または1年以上の就学経験者を想定した試験 |
試験方法・時間 | 実技試験 120分 |
受験資格 | 2級または準1級有資格者 |
受験料 | 1万6,500円 |
準1級
概要 | 3次元CADで、機械・製造系のモデリング・製図・設計などの業務に従事することを目指す方や、従事して間もない方を想定した試験 |
試験方法・時間 | 実技試験 120分 |
受験資格 | 準1級:2級有資格者 |
受験料 | 1万1,000円 |
2級
概要 | 3次元CADで、機械や製造系のモデリング・設計・製図などの業務に従事することを目指す方、および3次元CADの周辺業務に従事している方を想定した試験 |
試験方法・時間 | 筆記試験 60分 |
受験資格 | 制限なし |
受験料 | 7,700円 |
建築CAD検定試験(準1級~4級)
建築業界に特化し、建築分野におけるCADの操作能力、および知識を測る試験です。
準1級
概要 | 建築図面(RC構造など)を、建造物の特性を理解しトレースを行なって完成させる試験 |
試験方法・時間 | 実技試験 4時間10分 |
受験資格 | 4図面すべて完成させる |
受験料 | 1万4,700円 |
2級
概要 | CADで建築図面を作成する実力が備わっているかを問う試験 |
試験方法・時間 | 実技試験 5時間 |
受験資格 | 250点満点中190点~200点を目安とする |
受験料 | 1万500円 |
3級
概要 | 建築図面を、CADで正しくトレースする実力が備わっているかを問う試験 |
試験方法・時間 | 実技試験 2時間 |
受験資格 | 200点満点中140点~150点を目安とする |
受験料 | 1万500円 |
4級
概要 | 建築図面を、CADで正しくトレースする実力を備えているかを問う試験 (3級よりも問題数が少なく、難度が低い) |
試験方法・時間 | 実技試験 2時間 |
受験資格 | 200点満点中130点~140点を目安とする |
受験料 | 4級は高校での団体受験のみ 3級以上は誰でも受験可能 |
【主催】一般社団法人全国建築CAD連盟
オートデスク認定資格プログラム(AutoCADユーザー認定試験・AutoCADプロフェッショナル認定資格)
全世界のオートデスクユーザー20万人以上が取得している、世界共通の認定資格制度です。AutoCADに対する専門知識や、スキルを証明できます。
AutoCADユーザー認定試験
概要 | AutoCADの基礎知識、基本的な操作技術の能力を測る初心者向けの試験 |
試験方法・時間 | 選択式と実技操作(合計30問) 50分 |
受験資格 | 正解率70%以上 |
受験料 | 受験資格は特にないが、点数獲得のために最新のAutoCADコースおよび50時間以上の使用経験を推奨 |
AutoCADプロフェッショナル認定資格
概要 | 実務における AutoCADの知識と操作技術を問う、中級・上級者向け試験 |
試験方法・時間 | 実技操作 120分 |
合格基準 | 正解率80%以上 |
受験資格 | 受験資格は特にないが、オートデスク認定ユーザー資格保持者および400時間以上の使用経験を推奨 |
受験料 | 各オートデスク認定試験センター(ACC)に問い合わせが必要 |
【主催】オートデスク認定資格事務局
Vectorworksベーシック認定試験
建築士やデザイナーに人気のあるCADソフト、Vectorworks製品についての知識や操作スキルを問う試験です。
概要 | 2次元・3次元・ワークシートなどの基本機能と、 レンダリングの基本操作技能の習得度を問う試験 |
試験方法・時間 | 画面に表示される問題文を読み、適切な方法で解答 50分 |
合格基準 | 7割以上の正解 |
受験資格 | 特に制限なし |
受験料 | 一般:3,300円、OASIS加盟校:無料 |
【主催】エーアンドエー株式会社
※金額は全て、2021年12月時点のものです。
CAD資格を取得するための勉強法

資格取得するための勉強法には、おもに5つがあります。それぞれにメリットやデメリットがあるので、自分の好みや状況に合わせて継続しやすいものを選びましょう。
独学で学ぶ
費用が安く済むうえに、時間の制約がないので自分のペースで学習できます。
直接指導が受けられないので、不明点をすぐに解決できません。また、人の図面を見られないので、自分の到達レベルがわからないでしょう。
スクールで学ぶ
直接教えてくれる講師がいるので、不明点をすぐに解決できます。学ぶ仲間がいるのでモチベーションを維持しやすく、つまずきやすい初心者にとっては安心できる環境です。
費用が高めで、通うための時間の確保が必要です。
通信講座で学ぶ
自宅で学べるので、社会人など通学時間を割けない方や自分のペースで勉強したい方に適しています。
ただし、わからない点があっても、すぐには質問できません。
オンラインセミナーで学ぶ
遠隔地で開催されても参加でき、無料で開催しているセミナーがあるので気軽に勉強を進められます。チャットなどで講師に質問できる場合は、不明点を抱え込まずに済むでしょう。
回線が途切れてしまうようなトラブルが想定されます。通信速度の確保が必要です。
公的職業訓練で学ぶ
公的職業訓練(ハロートレーニング)は、訓練によって必要な知識やスキルを身につけ、再就職を目指す就職支援制度です。
職業訓練学校のCAD講座はおもに建築系と機械系の2種類あり、費用は完全無料、もしくはテキスト代のみの負担です。失業保険の受給資格者は、基本手当・受講手当・通所手当などを受給しながら学べます。
訓練開始日までに離職していることが条件とされているため、働きながらは学べません。
また、途中でやめられず、資格取得後はすぐに就職活動をして再就職となります。受講するにあたり、きちんとスケジュールを立てておくことが必要です。
公的職業訓練(ハロートレーニング)について、こちらで詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてください。

まとめ
CAD資格には複数の種類があり、内容やレベルはさまざまです。就職や転職先に合わせた資格を取得することで、スキルの向上はもちろんのこと、業務の効率化が図れ、会社に貢献できるようになるでしょう。
上級の資格を取得できれば、キャリアアップも可能です。自分に合う勉強法を選び、希望の資格を手に入れて、CADオペレーターとして活躍の場を広げましょう。