
AIの進化も目覚ましい昨今、ITはもっとも注目される業界のひとつとなっています。プログラミング教育も義務化され、今後、IT業界には若い世代がますます参入してくると考えられるでしょう。そんなIT業界でキャリアアップを目指す人におすすめなのが「応用情報技術者」。今回は、応用情報技術者試験の概要やメリット、試験の詳細などをご紹介します。
応用情報技術者とは
応用情報技術者試験は、国家が定めるところの「高度IT技術者として必要な応用的知識」を証明する試験です。
IT業界の資格にはさまざまなものがあり、民間資格ではMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)、オラクルマスターなどが一例として挙げられます。その中の唯一の国家試験として、IPA(情報処理推進機構)が主催する「情報処理技術者試験」があります。
情報処理技術者試験は、段階・目的別に12種類に分類され、応用情報技術者はそのひとつ。12種類の中には、IT入門レベルの「ITパスポート」、IT技術の基礎レベルの「基本情報技術者」などがあり、「応用情報技術者」はこのふたつよりも上のレベルに位置づけされる、ITエンジニアとしてワンランク上を狙いたい人のための試験となっています。
IT初心者である場合は、「応用情報技術者」の前に、「ITパスポート」「基本情報技術者」取得から目指すのが一般的です。
基本情報技術者試験の詳細や試験内容を知りたい方はこちらをご覧ください。

応用情報技術者を取得するメリット
IT業界は試験合格よりも実績と思われがち。ですが、応用情報技術者を取得しておくことで大きなメリットが得られることもあります。
就職・転職時のアピール材料となる
国家試験である情報処理技術者試験はIT業界では知名度が高く、その試験で応用レベルとなる応用情報技術者をもっていることは、転職や就職においても大きなアピールポイントとなります。実績にプラスして強みを持ちたい人にはうってつけです。
社内評価のポイントになる
SEやプログラマーといったITエンジニアは、営業とは違い数字で評価しにくいところがあります。そのため、頑張っているのに社内評価がなかなか上がらないと悩む人も。実力を証明する資格を取得することはわかいやすい評価ポイントになり、昇給・昇格につながる可能性もあるでしょう。
また、企業によっては、取得者に手当や報酬を支給しているところも。応用情報技術者に合格したハイカラROCKさんは、合格と報酬の喜びをツイートしています。
一部の国家試験が免除される
応用情報技術者をもっていることで、情報処理技術者試験の中でさらに上のランクである、「情報処理安全確保支援士」「ITストラテジスト」「プロジェクトマネージャ」「情報セキュリティスペシャリスト」「システムアーキテスト」といった試験の一部が免除となります。さらに、中小企業診断士試験や弁理士試験でも一部免除が適用されます。IT業界でキャリアアップしたい人だけでなく、仕事の幅を広げたい人にもメリットがあります。

応用情報技術者試験の詳細
続いて、実際に応用情報技術者試験を受ける際の受験資格や試験内容、試験日程といった詳細を解説します。
受験資格
応用情報技術者試験の対象者は「高度 IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」となっていますが、実質的な受験資格は設けられていません。年齢、学歴、国籍、経験問わず受験することが可能です。
試験内容
応用情報技術者試験は午前試験(150分)と午後試験(150分)があり、午前と午後で分野が異なります。午前はテクノロジ系、マネジメント系、ステトラジ系の分野から知識を問う問題、午後はデータベースやネットワーク、プログラミングに関する問題が出題されます。
午前試験
<テクノロジ系>
基礎理論(基礎理論、アルゴリズムとプログラミング)/コンピュータシステム(コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア)/技術要素(ヒューマンインタフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ)/開発技術(システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術)
<マネジメント系>
プロジェクトマネジメント/サービスマネジメント(サービスマネジメント、システム監査)
<ストラテジ系>
システム戦略(システム戦略、システム企画)/企業と法務(企業活動、法務)/経営戦略(経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ)
午前試験では、上記の範囲から四肢択一式でテクノロジ系が50問、マネジメント系が10問、ストラテジ系が20問の計80問が出題されます。
午後試験
- 経営戦略に関すること
- 情報戦略に関すること
- 戦略立案・コンサルティングの技法に関すること
- システムアーキテクチャに関すること
- サービスマネジメントに関すること
- プロジェクトマネジメントに関すること
- ネットワークに関すること
- データベースに関すること
- 組み込みシステム開発に関すること
- 情報システム開発に関すること
- プログラミングに関すること
- 情報セキュリティに関すること
- システム監査に関すること
午後試験では、上記の項目のうち、「情報セキュリティに関すること」が必須問題、そのほかは残りの項目から4つ選択して回答します。
合格基準は、午前試験・午後試験ともに100点満点中60点以上。どちらかでも基準点に満たなければ合格できません。
午前試験は四肢択一式マークシートなのに対し、午後試験は記述問題もあり、難易度がぐっと上がります。午後試験はより入念に準備して臨む必要があるでしょう。
試験合格率・難易度
IT初心者や経験の浅いITエンジニアを対象としているITパスポート試験・基本情報技術者試験と異なり、応用情報技術者試験はある程度の経験を積んだITエンジニアを対象としています。そのため、受験者の多くは実績・経験のあるエンジニアですが、それでも合格率は20%程度。5人に1人しか合格できていない計算となります。これだけでも、難易度の高さが伺えるでしょう。
試験日程
試験は年に2回、春(4月第3日曜日)と秋(10月第3日曜日)に実施されます。春試験は1月に、秋試験は7月に申込受け付けが始まりますが、1か月程度で受け付けは修了してしまうので、試験を受ける意思がある人は早めに手続きを済ませておくと安心です。
試験会場は全国主要62都市に設けられます。どこで試験を受けるかの選択は可能で、申込の際に選択します。
試験日程や申込スケジュール、試験会場などの詳細は公式ページにも掲載されています。事前にチェックしておきましょう。

応用情報技術者試験合格のための勉強法
独学
応用情報技術者試験は記述式の問題もあり、基本的な知識はもちろん、問題を読み解く力や適切に回答する文章力なども必要になってきます。当然、必要項目を暗記すれば合格できるというものではありません。ITについての深い理解や応用力が必要になり、学習時間は経験を積んだITエンジニアで200時間ほどと言われています。
総学習時間を200時間とした場合、1日2時間の学習でおよそ3か月。これ以上長期になるか短期になるかはテキスト選びにもかかってくるでしょう。ややこしい応用問題が多いからこそ、わかりやすい教材が必須です。
また、記述式問題もある応用情報技術者試験では、問題の読解や回答文の作成に慣れるためにも過去問での学習が重要と言われています。わかりやすいテキストと過去問の併用で効率的な学習を目指しましょう。
情報処理技術者試験のテキストで人気が高いのがキタミ式シリーズ。イラストが駆使されており、目で見て理解できるようになっています。
直近4回の試験問題が収録されているのがこちら。過去問を繰り返し解くことで、出題傾向も掴みやすくなるでしょう。
通信・通学講座
より短い学習時間で合格を目指したい、独学では学習を継続できる自信がない……そんな人は、通信講座や通学講座を利用するのもおすすめ。
有名なところでは、資格の大原やTEC、iTEC、LECなどが応用情報技術者講座を設けているようです。Webコース、試験対策コース、e-ランニングでの模擬試験などコースはさまざま。費用も1~2万円のものから5~10万円のものなどかなり開きがあるので、費用と内容をしっかり比較検討しましょう。
また、情報処理技術者試験対策の講座を始め、プログラミングなどIT系の講座には、費用の最大20%が支給される教育訓練給付金制度の対象となっているものもあります。かなりお得に講座を受けられる可能性があるので、ぜひチェックしてみてください。
このほか、政府は高度なデジタル技能を備えた人材を2026年度までに230万人育成することを目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の推進や2022年の経済財政運営の指針「骨太の方針」に離職者などが無料で学べる職業訓練の拡充を盛り込むことを検討しています。こちらの動向にも注目です。

まとめ
応用情報技術者試験合格は、その名のとおり応用力のあるITエンジニアであることを証明します。ほかのエンジニアと差をつけたい、ワンランク上を目指したいという人には最適です。
ITパスポートや基本情報技術者に比べると難易度は高くなり学習にも時間を要しますが、応用情報技術者の学習で得た知識は、今後ITエンジニアとして活動する中で確実に役立つでしょう。高度なIT人材を目指して、挑戦してみてはいかがでしょうか。