基本情報技術者とは|ITエンジニアが最初に受けるべき国家試験

システムエンジニア(SE)やプログラマーなどIT・通信のエンジニアの求人倍率はこのコロナ禍にあっても4.92倍、人手不足の上に高収入の求人も少なくありません。そんなIT業界への就職・転職を目指す人がぜひ合格しておきたいのが「基本情報技術者」です。ここでは、基本情報技術者試験の概要や試験の詳細、勉強法などを紹介します。

基本情報技術者とは

基本情報技術者試験は、IT業界における国家試験で、国家が定めるところの「IT技術者としての基礎的な知識」を証明する試験です。

IT業界の資格にはさまざまなものがあり、民間資格ではMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)、オラクルマスターなどが一例として挙げられます。その中の唯一の国家試験として、IPA(情報処理推進機構)が主催する「情報処理技術者試験」があります。

情報処理技術者試験は段階・目的別に12種類に分類されており、基本情報技術者試験はそのひとつ。実務レベルの基礎的な知識に関する試験で、「IT業界で働くのであればこれだけは理解しておくべき」といった内容が出題されます。IT業界でキャリアを積んでいきたいと考えるのであれば、まず受けておきたい試験と言えるでしょう。

実務レベルの手前の、より基礎的なIT知識の試験としてはITパスポート試験があります。こちらも情報処理技術者試験のひとつですが、プログラミングの実技も求められる基本情報技術者試験に対し、ITパスポートはITの入門レベルの知識が中心に出題されます。IT初心者であれば、ITパスポート試験から挑戦するのもおすすめです。

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基本情報技術者を取得するメリット

ITエンジニアは試験合格よりも経験、と言う人もいますが、基本情報技術者を取得しておくことにもさまざまなメリットがあります。

ITのベースとなる知識を身につけることができる

基本情報技術者試験ではIT業界で働くうえで必要となる知識が広く浅く問われます。IT業界もSEやプログラマー、WEBデザイナーなどジャンルはさまざまですが、基本情報技術者の勉強で身につけた知識はどの職種においてもベースとなり役立つ知識です。

仕事面以外では、2020年より必修となったプログラミング教育においても注目される試験となっており、学生など若い人が取得するケースも増えているようです。

知名度が高く面接でのアピール材料となる

ITに関する試験の中でも情報処理技術者試験は唯一の国家試験。その中の一端である基本情報技術者は知名度も高く、面接でもアピール材料のひとつとなるでしょう。基本情報技術者だけで就職・転職に大きく有利になるとは言えませんが、わかりやすい知識の証明になります。

資格手当がもらえることもある

企業の中には、「基本情報技術者」所持者に手当を支給しているところもあります。就職・転職を目指す人だけでなく、今の職場で収入アップを目指したい人にとってもメリットがあると言えるでしょう。

基本情報技術者資格の試験

続いて、実際に基本情報技術者試験を受ける際の受験資格や試験内容、試験日程といった詳細を解説します。

受験資格

基本情報技術者試験の対象者は「高度 IT 人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身につけた者」となっています。ただ、これはあくまで対象者であり、実質的な受験資格は設けられていません。年齢、学歴、国籍、経験問わず受験することが可能です。

試験内容

基本情報技術者試験は午前試験と午後試験があり、午前と午後で分野が異なります。午前はテクノロジ系、マネジメント系、ステトラジ系の分野から知識を問う問題、午後はプログラミングに関する問題が出題されます。

午前試験

<テクノロジ系>

基礎理論(基礎理論、アルゴリズムとプログラミング)/コンピュータシステム(コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア)/技術要素(ヒューマンインタフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ)/開発技術(システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術

<マネジメント系>

プロジェクトマネジメント/サービスマネジメント(サービスマネジメント、システム監査)

<ストラテジ系>

システム戦略(システム戦略、システム企画)/企業と法務(企業活動、法務)/経営戦略(経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ)

上記の範囲から四肢択一式でテクノロジ系が50問、マネジメント系が10問、ストラテジ系が20問の計80問が出題されます。

午後試験

・コンピュータに関する問題(ソフトウェア・ハードウェア、データベース、ネットワーク)

・情報セキュリティに関する問題

・データ構造及びアルゴリズムに関する問題

・ソフトウェア設計に関する問題

・ソフトウェア開発に関する問題

・マネジメントに関する問題(プロジェクトマネジメント、マーケティングマネジメント)

・ストラテジに関する問題(システム戦略、経営戦略・企業と法務)

上記の項目から全部で11問が出題され、そのうち必須問題が2問(情報セキュリティとデータ構造及びアルゴリズム)、残りの9問から3問を選択し回答します。

午前試験と午後試験それぞれで、100点満点中60点以上が合格基準となります。どちらかでも基準点に満たなければ合格できません。

試験合格率・難易度

IT関連の国家試験でもっとも基礎的といわれるITパスポートが情報処理技術者試験区分の「レベル1」に区分されているのに対し、基本情報技術者試験は「レベル2」。より実践的な知識が求められるのが基本情報技術者試験です。直近10年の合格率は平均25%ほど。試験範囲も幅広く、決して難易度が低い資格ではないでしょう。

試験日程

試験は1年に2回、春(4月第3日曜日)と秋(10月第3日曜日)に行われます。春試験は1月に、秋試験は7月に申込開始となります。1か月程度で申込は締め切られてしまうので、申込のタイミングを間違えないように注意しましょう。

試験会場は全国62都市に設けられ、申込の際に受験地を選択する形になります。

試験日程・試験会場の詳細は公式ページでも確認しておきましょう。

スケジュール、手数料など | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「スケジュール、手数料など」に関する情報です。

午前免除について

基本情報技術者試験には「午前試験免除制度」というものが設けられており、IPA(情報処理推進機構)が認定する講座を受講し修了試験に合格した人は、午前試験が免除となります。

講座は講座開講を希望した大学や高校、専門学校などに設けられているほか、Web講座もあります。中には、受講料が最大20%戻ってくる教育訓練給付制度の対象となっている講座も。午前免除制度を希望する人は、調べてみるとよいでしょう。

認定講座修了後、修了試験を受験し合格すれば、午前試験免除制度を利用することが可能となります。修了試験は年4回(6月・7月・12月・1月)。比較的チャンスが多いのでぜひ検討してみてください。

午前試験免除制度を利用することで、本試験(基本情報技術者試験)の午後試験の勉強に集中できるなどのメリットがありますが、午前試験免除制度には有効期限があり、免除対象期間は指定講座修了から一年までとなっているのでその点は注意しましょう。

午前試験免除制度の詳細や講座について、修了試験実施方法などはこちらでも確認できます。

科目A試験免除制度 基本情報技術者試験(FE) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「科目A試験免除制度 基本情報技術者試験(FE)」に関する情報です。

基本情報技術者試験合格のための勉強法

独学

基本情報技術者試験の学習方法や学習時間は、ITの知識がどれほどあるかで大きく変わってくるでしょう。すでにIT業界での業務経験があったり情報系の学校を卒業していたりIT系のベース知識をもっている人であれば、50時間程度の学習時間でも合格は可能といわれています。

一方、IT系にまったく携わったことのない初学者の場合、100時間~200時間程度は見積もっていたほうがよいでしょう。半年以上かかるケースも少なくありません。最初は参考書やテキストに出てくる用語の意味を調べることから始めなければならないため、地道な努力が必要となります。

基本情報技術者試験の学習で、特に重要といわれているのが過去問での学習です。午前試験は過去問から流用されることも多いので、過去問を繰り返し解くだけでもぐっと合格に近づくかもしれません。IT経験者・初学者問わず、過去問はしっかりチェックしておきたいところです。

また、過去問や用語を解説する学習動画も多く配信されています。テキストと併用すると、より効率的な学習ができるかもしれません。

基本情報技術者のテキストで口コミ人気が高いのがこちら。基本情報技術者の講師経験もある栢木厚氏による参考書です。各節が短め、かつイラストも駆使してわかりやすく構成されています。最新の試験問題も掲載されているので問題集としても活用できます。

基本情報技術者試験のテキストといえばこれ!の定番、「キタミ式シリーズ」。4コマ漫画なども手掛けているきたみりゅうじ氏がイラストで解説する、目で見て理解するテキストです。

通信・通学講座

IT系の勉強内容はとにかく用語が多く、それをコツコツ調べながらの学習は根気が必要です。挫折してしまう不安がある人は、講義やWeb学習が充実している通信講座や通学講座を利用するのがおすすめです。

通信・通学講座では、スタディング、TAC、ITEC、大原などが人気のようです。そのほかにも基本情報技術者講座を設けているスクールは多数あるものの、費用は高低差が激しく、費用重視で選ぶ人はしっかり費用を比較して。高低差がある中で、おおよその平均は、通信で6~7万円ほど、通学で8~10万円ほどのようです。前述した教育訓練給付制度給付金の対象となっている講座もあるので調べてみるとよいでしょう。

基本情報技術者試験合格者の声

基本情報技術者資格をとりたいけど不安、学習のイメージがわかない…という人は、合格した人たちの声を参考にしてはいかがでしょうか。ここで、実際の合格者の声をひとつご紹介します。

テキスト&過去問でコツコツ学習

社会人2年目にして多くの資格を取得している”ホリミー@長期積み立て新婚君”さんは独学で基本情報技術者に合格。上記でも紹介した栢木先生のテキストを推奨されています。

まとめ

基本情報技術者試験はIT系の実務のベースとなる知識が身につきます。これまでIT系以外の職務に就いていた人がIT系の会社への転職を目指す場合、実績が無いため実力の証明が難しいものですが、試験に合格したことでアピールもしやすくなるでしょう。

難解な用語も多く少々難易度が高い試験かもしれませんが、IT業界で働くのであれば、基本情報技術者の学習で学んだことは確実に役立ちます。いっそう加速しているリモートワークやAIによる業務のIT化の流れのなかで、確実なキャリアを積んでいくために、ぜひ挑戦するべき試験だと思います。

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